戦前戦中、広島から呉に嫁いだ主人公の日常の物語。
1話につき半月ないし1ヶ月程度の時間経過で物語は静かに進んで行き(その出来事が
あった月が「19年2月」「19年3月」とサブタイトルになっている)、幸せも苦労もある
普通の暮らしの中に戦争がゆっくりと溶け込んで来てしまう様を丁寧に描く。
けして明るいものでないだろう結末の想像を常に頭の片隅に置きながら、
世界のあちこちのわたしたちは物語を楽しむ。
第9話「19年5月」の話の中で嫁ぎ先の義母が昭和6年に義父が失業したときのことを
「大ごとじゃったよ
大ごとじゃ思うとったあの頃は
大ごとじゃ思えたころがなつかしいわ」
と振り返るシーンがある。
その19年5月もすぐに過去になるのだろう。
「20年8月」がゆっくりと近づいてきている。
今に続く悲劇と警告。
「夕凪の街 桜の国」から「さんさん録」をへて新たに挑む新境地。