『カツラ美容室別室』のときも「なにこの淡々とした展開は#」だとか、「主人公たちに全然共感できない」なとの批評を受けてましたっけ。この作品も、おそらく「そういう風にしか読めない人には一生わからない作品」だろうなあと思います。もうそれはしょうがない。だって,これこそが,山崎ナオコーラの真骨頂だからです。
まずは,なぜこの装丁!とおもいました。表1は紺碧の空をバックに吹き上がる爆風。そして表4は、紺碧の海からふきあがる噴煙(海底火山?!)です。装画は会田誠さんの作品だそうです。作者インタビューで,ぜひこの装丁の意味を語ってほしい!
さて、お話しのなかで、主人公である私(しおちゃん)は何度も「爆笑」します。しかしその爆笑は、愉快な笑いではなくて,そのほとんどは「へっ,なにいってんのこの人」とか「はあっ?バカみたい」という類の笑い。かなり挑戦的です。見ようによっちゃあナマイキかしらね。そして、この人は,笑うだけじゃなくて,よく泣きます。だけどそれは「単に涙腺が弱い」だけだって言っています。でも,どうやらホントは,そんなに強くもないみたい。
私の頭をいい子いい子してくれたりやさしくしてくれる,そんな紙川くんに甘えてしまえばらくちんだってわかってる。だけど、なんとなくそう,手放しではそうできない居心地の悪さを抱えてる。実はそれは,紙川くんのほうでもおんなじように感じてることだったりして、それがまたそれぞれの自己嫌悪につながっていって...という悪循環。このあたりの「はっきりしない」かんじが、実にリアルです。
だけどね、ふらふらよろよろ,なんとなく歩いているうちに、ちゃんと確実に前に進んでいるのです、このひとたちは。そのいじましさというか、よろけ具合にほろっとします。そして、わたしもがんばろって、なんだかそう思えてきます。そんな本です。