カルペンティエールの小説はまだこれしか読んだことがないが、ラテンアメリカ文学のいわゆるマジック・リアリズムを非常にピュアな形で堪能できる傑作と感じた。次々と繰り出される神話的・驚異的現実の数々、ところどころに見え隠れする思わず笑っちゃうようなユーモア。まるでマルケスじゃないかと言われそうだが、あそこまで饒舌でなくもう少し端正な感じを受ける。現実離れした出来事を自由自在につなぎ合わせていく一貫した夢幻的な語りが素晴らしい。ストーリーはハイチの暴動と反乱の歴史を、奴隷のティ・ノエルの目から見た驚異的現実として描き出すもので、ブードゥー教の祭司マッカンダル、独裁者アンリ・クリストフといった神話的な、しかし実在の人物を軸に進んでいく。マッカンダルの火あぶりの場面や、クリストフの白亜の宮殿、その凋落といった劇的かつ夢幻的なシーンでカルペンティエールの筆は冴え渡る。マルケスの諸作と比べてそれほど分厚くなく、重量感には欠けるがそれだけコンパクトにまとまっており、凝縮されたマジック・リアリズムは味読に値する。ラテンアメリカ文学好きであれば外せない作品。