綺麗なカバーに引き寄せられ、
思わず手に取ったのがこの本でした。
愛らしい女の子の指先から本当に音楽が聴こえそうで、
背後に立つ不気味な男性とのコントラストも不思議に素敵で、
すぐ傍に在りながら、
まるで違った次元に存在しているかのような描き方が印象的だと感じたのですが、
それが意図的であった事を読んで行くうちに納得しました。
またストーリーの方も、突拍子もない展開にも関わらず、
読み始めからすぐに惹きこまれました。
クラシック音楽に苦手意識のある私でしたが、
特に知識や興味が無くても充分に楽しめるものでした。
音楽家が小説を書くとこうなるのか、と、
登場人物の扱い方や、展開に新鮮味を覚えましたし、
突然の始まりに相応しい突然の終わりと長引く余韻には、
なんとなく音楽的なものを感じます。
正直、このカバーで無ければ手が出なかった作品でしたので、
読み進める途中でも改めて眺めるうち、
描かれた小さな人間たちをどうにか特定してやりたくなりました。
読み進め、カバーを眺め、また読み進み…と、
作品を読みながら、カバーも読み解ける、
今までにない読書の楽しみ方を提供してもらった感じです。
これがもし、イラストレーターや編集者の思惑であったなら、
彼らの本に対する愛情に感服しますし、素敵な革命だと思います。
すっかり魚住幸平氏のファンになりました。
帯に隠れた部分や、
隠れていないのに隠されている仕掛けに気付いた時の楽しさを
すぐに誰かと共有したくなって、
訳者あとがきに、
本屋の主が「気に入った人にプレゼントしている本」だと書かれて居た事を思い出し、
深く頷いてしまいました。
勿論、私も友人の為に
こちらでも数冊注文させて頂きまして、大変喜んでもらえました。