ボウリングのピンは全部で10本ある。どのピンが無くてもストライクを奪うこともストライクの音を奏でることもできない。ピアノにしても白鍵と黒鍵の88の鍵盤両者がなくてはモーツァルトの楽曲を演奏することもできない。
本書は生前の筑紫哲也さんによる『NEWS23』の“多事争論”での発信を1冊にまとめた内容である。
フルオーケストラで演奏される交響曲やオペラは楽器ごとにそのスコアが異なるが、最終的に観客の耳に届くのはそれぞれの楽器が奏でる音が集成された音楽作品となる。
この本の魅力を一言でいうならば、このオーケストラの形に似ていることである。陶芸の話をしながらも最後は“形と形を作る者”そして“形を作ることは土との対話に始まって、対話に終わる”として、“この国のあり方と私達の関わり方”に言及する。
番組では短い時間だったが改めて活字で読み直してみる時、著者が語り残したかったこと、そして著者が最も話したかったこと(この国にいる1人1人がこの国の主役であることを忘れないでほしい。そして多くの人の声でこの国を豊かな国にしていきましょう)との想いが伝わってくる。常に相手の意見を十分に聴き、決して声を荒らげることのなかった著者のスタンスを忘れてはならないと今更ながらに考えさせられる。