子どもの中に様々な問題を発見したとき、周囲の大人は当の子ども以上に右往左往して、結局のところ何も分からずに混迷の度を深めてしまうことはしばしばでる。それは医療の現場然り、教育の現場然りである。そのようなとき、本書の基盤となっている精神分析の理解を借りて子どもの問題を考えてみると、腑に落ちるところが大きい。精神科医であり、クライン派の精神分析家として日々子どもの治療に当たっている筆者が本書で述べている子どもの治療は、マジックさながら、その魔術的不思議さに魅了させられる。しかし裏には厳然たる精神分析の理論が後ろ盾となっているので、安心して成り行きを見ていくことができる。最後の2章に書かれている「千と千尋の神隠し」と「海辺のカフカ」を精神分析的に考察しているところは、なぜこのストーリーが多くの読者を獲得しているのか、その種明かしをしてくれている。子どもに関心のある方ばかりでなく、人の心についてもっと知りたいと思っている方に勧めたい納得のいく1冊である。