いい年をして最初にはまったきっかけは、偶然聞こえたテレビアニメのセリフが衝撃的だったからだ。小学生の女の子が、「あなたを母親とは思えない、でも私を産んでくれたことには感謝している」という内容。一体これは何なのだと思い、原作があると知って、即、買いに走った。
要するに、主人公の紗南(さな)は公園のベンチで拾われた子どもで、5歳のときにそのことを知らされ、作家の母親が本当の母親を探し出すためにエッセイを書き、名乗り出てきた実の母親に向けて発せられたセリフだったわけだ。とわかっても、私の衝撃は消えなかった。実に常識的な発想しかできない私には、実の親があらわれて一緒に暮らそうといわれても断っていい、という選択肢が思い浮かばなかったのだ。それを「産んでくれてありがとう」という言葉でフォローするあたりも見事だ。結局、実の母は引き下がり、紗南は大好きなママとの暮らしに戻るわけだが、そこに至るまでの心理描写には脱帽した。
その後も、覚えていないはずの「生まれた直後に捨てられた記憶」のせいで、表情が出ないという心の病にかかったり、波乱に富んだ展開が続くが、その間、紗南を思う「ママ」の一貫したあたたかい視線に救われる思いがする。
少女マンガらしい恋の話も見どころではあるが、登場する子どもたちそれぞれが、小学生にして既にいろいろな過去を背負っている。それでも最後は希望に満ちた終わり方をしているのは、やはり作者の力量というしかないだろう。