・全体像
どんなに短い章句でも、作品から直接選りだした一句は、ダイジェストでは
味わえない生の魅力を伝えます。
岩波文庫の名著作から、心ひかれる印象ぶかいことばを抜粋した一冊。
ことばを選ぶにあたり最大80字前後の章句に限定し、また文の途中を省略して
引用しない、俳句・短歌などを選考外としている。
・感想
ただの名言集かと手に取ったのですが、それとはまた別のようです。
文学者、思想家、哲学者などが紡いだ一冊から、一塊で意味が読み取れるものを
引用し、その出典などを簡易に示したアンソロジーと呼ぶのが正しいと思います。
ことばを抜粋した本はままありますが、この本が特化した点は自分で考える要素が
あるということです。ことばのみで意味や著者の見解がないので、純粋にことばを
楽しめるのがとても心地よいです。
なので、意味や著者の胸中が知りたい方には期待はずれになる恐れがあります。
抜粋した数も365作と、一日ひとつ一年間で読み切れる配慮もされています。
(ひとつひとつが短いので、数時間で読めるとは思いますが)
素敵な作品なので、ぜひ本棚に加えてください。
・抜粋文
自然なんぞが本当に美しいと思えるのは死んで行こうとする者の眼にだけだ。
堀辰雄 『風立ちぬ・美しい村』