「クライング・ゲーム」のニール・ジョーダン監督作。グレアム・グリーンが原作。「ヒューマン・ファクター」というスパイ小説が有名で、映画では「第三の男」の原作としても知られています。ジョーダンはグリーン作の「ことの終わり」の監督だけでなく脚本も手掛けていますが、彼はよく原作を読み込んだのでしょう。物語の構成がとても巧みであり、うまく撮られていると思います。
サラ(ジュリアン・ムーア)との不倫の恋が突然に終わってしまったベンドリクス(レイフ・ファインズ)だが、再びサラと会うことになり、戦争をはさんで終わった情事の真相をやがて知るようになる。早い話が三角関係を描いているわけだが、話は通俗的にはならない。これは、ストーリーをどう語るかということがとても巧緻なため、まるで恋愛ミステリーのよう。最後になって以外な真実が現れて心を打つのだが、原作の巧みさとそれを伝える監督の手腕がみごとに結実している。こういう話が安っぽくならないためには、それなりの語りのテクニックが必要だからだ。
ジュリアン・ムーアはアカデミーにノミネートされるほどで、圧倒的な官能をこの映画では表現している。ベンドリクスにはまさにレイフ・ファインズしか思いつかないくらい合っている。この二人の演技は言うまでもないが、サラの夫役のヘンリー(スティーブン・レイ)、探偵役とその男の子(後半にこの男の子の頬の傷が癒えるエピソードは最高。って、これは原作にもあったんだっけ?!)と、登場人物は少ないが脇役らがとても印象的でもある。
全体的には大人の恋であり、大人の映画である。ある程度の年齢でないと退屈かもしれない。とても渋い映画であり、どちらかというと映画を観たというより、小説を読んだ気になったのはどうしてかな。たぶん、細部がよく演出されていて、派手なストーリーがなく、じっくりと味わうタイプの映画だからだろう。一度だけでなく二度観たくなる映画ですね、こういうのは。