早くも完結巻だが、前巻同様、全く退屈させられることなく夢中で読み終えることが出来た。
前半部分の、茜の母親の虐待が原因で、子供時代に親友だった茜と蓮華に悲しい事件が起き・・・という蓮華の共感覚の原因となる過去話が最も盛り上がる部分だったのだと思うが、私自身は、この7〜9話の「誕生」と12話の「花の名」の間にある事件性のない、動きの少ない10話と11話がお気に入りである。特に10話の「召しませ沈黙」は目から鱗の気分だった。美人の万城目の語りというのも珍しいが、「誕生」の回で主役だった茜と蓮華の過去の経緯を知らない万城目が、二人の仲良さそうな様子を観察して、「わたしがいる時とみんな違うじゃん(態度が)」と思う。また、4人でいるとそうでもないのに、2人きりになると戸惑う友達が茜だと意識もしている。そういう微妙な友人関係に、自分に問題があるからなのかと、ちょっと落ち込みかけた万城目だが、ふと気付く。
「みんなが私に向けない顔を持っている=私にだけ見せてくれる顔がある」
なんて素直な、なんて前向きな解釈なんだろう。でもそう思わせてくれるだけの友人関係を築いているからこその台詞だと思う。それはこの「ことことかるてっと」というタイトルに集約されている関係だ。現実に人間関係にすれ違いや気まずさを感じている人にとって本書はもしかしたら心を軽くする助けになるかも知れない。見方を変えれば新しい発見がある。希望の持てる優しい作品だ。