自称「ロック界の奇行師」、アルカラの4枚目のミニアルバム。
(現在手に入る盤としての4枚目。入手困難だが過去作品は存在する。)
自分は「そうきたか」「BOY NEXT DOOR」「フィクションを科学する」までの3作品を聴き、
その独特な歌詞の言葉選びとキャッチーなメロディ、
臨場感溢れるセッションに惚れ込んで、今作も購入するに至った。
いや、恐れ入った。実に素晴らしいアルバムである。
「聴けばわかる!」と書いてレビューを終わらせるのは簡単だが、
それでは参考になるレビューにはならない。
しかし、本当はそう書きたい。それほどインパクトの強い盤であった。
まず過去作品の傾向としては、
「1曲目は控えめ、2曲目にキラーチューン、3曲目に特徴的な曲、…」
という特徴があった。これはこれで非常に良く出来ており、
作者の意図通りにこちらの心はグイグイ引き付けられ、振り回される。
しかし今回の「こっちを見ている」は、心の準備をする余裕なく、
1曲目「半径30cmの中を知らない」からかっ飛ばしている。
「いつもならこれは2曲目のノリだ。ちょっと飛ばしすぎでは?」
そう思った。途中でダレがきたりと、失速をする心配がある程であった。
しかし、今作はそんな甘い構成ではなかった。
2曲目「癇癪玉のお宮ちゃん」は変わった歌詞だが、
演奏にはキレがあり、その二要素が混ざり合って独特の中毒性を生んでいる。
3曲目「しょうがないなぁ」4曲目「デカダントタウン」
5曲目「わ、ダメだよ」はタイトルからは想像もつかないだろうが、
どれもアルカラスパイスをブレンドした真っ向勝負の良曲である。
当たり前だが、「手を抜いていない」のがひしひしと伝わる。
6曲目「キャラバンの夜」はインスト曲。
定番のバイオリンもセッションに加わり、
本作前半に聴いたメロディの雰囲気をあえて残し、
アルバムに一貫性を持たせることに成功している。
7曲目「グラス」は重低音を鳴らしたロック。
聴き手は一定の盛り上がりを保ちつつ、スローテンポのため少しずつ落ち着いてくる。
最後は8曲目「秘密基地」。しっとりと聴かせるナンバー。
このアルバムのタイトル「こっちを見ている」はこの曲の中の歌詞に登場する。
その言葉が何を意味するかわかると、またこのCDの印象も変わってくる。
前作同様、ボーナストラックも収録。
有名曲のパロディ要素もあり、色々な遊び要素が詰まっている面白い曲。
8曲目とトラックが分かれていないため、単体では聴きにくいのが玉に瑕。
ぼーっとしていると、あっという間に2周目突入を許してしまう。
以上に述べたとおり、恐ろしく勢いのあるアルバムである。
前3作に比べ、歌唱力も上がり、演奏にも一層の拡がりが感じられる。
多くのアーティストが二作目あたりからぐらつき、
ファンを不安にさせるのが当然となりつつあるこのご時世。
どうしてこのバンドはこうも「アルカラらしさ」を失わずにいられるのか。
きっと、全ての作品で8曲プラス1曲の構成にするなど、
彼らが「変わらないための努力」を続けているからだろう。
インディーズレーベルから出し続けていることにも原因があるのかもしれない。
いずれにしても、私は彼らのアイデンティティの普遍性に敬意を表したいと思う。
猛スピードでこちらに駆け寄り、
バンド「アルカラ」の名刺を差し出してくるような一枚。名盤。