本書は超長寿漫画「こち亀」の連載30周年を記念して出版されたノベライズだ。日本推理作家教会に所属する中堅から大御所までの作家7名が寄稿している。シリーズ小説として人気の高い「新宿鮫」や「池袋ウェストゲートパーク」の登場人物とこち亀の主人公両津勘吉の競演が本書のウリのようだ。しかし読んでみると、鮫島やマコトとドタバタを繰り広げる両さんよりも、京極夏彦や東野圭吾描く両さんのほうが原作のイメージに近いし、純粋に面白かった。
京極夏彦「ぬらりひょんの褌」は大原部長が学生時代に遭遇した妖怪ぬらりひょんの正体が、数十年の時を経て暴かれる話だ。京極夏彦の十八番である妖怪談とこち亀ワールドがみごとにミックスされていて面白い。
東野圭吾「目指せ乱歩賞!」これは乱歩賞の賞金と印税に目がくらんだ両さんが乱歩賞へ応募すべくめちゃくちゃな勢いで小説を書き始める話なのだが、その様子がとにかくスゴイ。両手両足で4つのキーボードを操り、用紙やインクの補充が間に合わないほどのスピードで印刷を実行、ついにはPCが火を噴いてしまうほどなのだから、両さんの人間離れぶりは原作にも引けを取らない。さてこの話。オチは賞選考の過程や曖昧さを熟知しているベテラン作家ならではのもので、なかなか興味深いものになっている。
それにしても連載30年ってちょっとスゴイ。
30年の間、原作者の秋元治は1度も休載せずに描き続けたというのだから頭が下がる。