朝日新聞石巻支局長の高成田享氏。1948年生れで、東大/経卒、1971年朝日新聞社に入社。96年ニュースステーションのコメンテイター、98年アメリカ総局長、ブッシュ大統領と会見も行う。02年論説委員。そして定年を迎えるに当たり、希望は「地方勤務」、希望地は「魚市場のある漁業基地」とし、望み通りの定年嘱託、シニアスタッフとして地方記者に。そして異動の内辞は「石巻支局」だ。宮城県第2位の人口16万人を擁し、仙台から仙石線で約1時間の、全国でも有数の水産都市、石巻市に支局長として赴任したのが08年1月。63歳まで勤められるようだ。「さかな」が好きな高成田氏にしてみれば願ってもない幸せな第2の人生である。着任早々翌日が、石巻で唯一のデパート「さくら野百貨店/石巻店」の撤退発表となった。それから石巻市を中心に初めての経験談が面白い筆致で満載だ。石巻の特徴は、人口当たりの寿司屋の数が日本一、調査捕鯨のミンククジラの鮎川港、サンマ船とサンマの刺身、サバ・ギンザケの「金華」ブランド、斎藤氏庭園、女川原子力発電所、航空自衛隊松島基地だ。さかな好きな著者らしく第5章では、「魚を食べる」として春から石巻での季節の魚のエッセイが楽しい。そして仙台市在住の鈴木秀男氏の9種の魚介類の素晴らしい絵が掲載されている。石巻の春は、ナマコ、メロウド、サクラマス、クジラ、アブラボウズ。石巻の夏は、スズキ、トラフグ、カワハギ、ホヤ、クロマグロ、アナゴ、カツオ、アワビ、ウニ、マンボウ。石巻の秋は、サンマ、マイワシ、イカ、ウナギ、サバ、カマス、サワラ。石巻の冬は、カキ、タラ、どんこ、ナメタガレイ、キチジ、ハゼ。これらのさかな談議が楽しい。還暦「さかな記者」の「さかな道」は奥が深い。