作者があとがきで書いているように、本の体裁を整えるために未発表のものを掻き集めた感がある。だから中身には当たりはずれがある。玉石混交というところだ。ただ、うれしいことに玉の作品はまさしく逸品である。
メインは「話田家」全七話だ。「話田家」では母親が自殺した後に残された三人兄弟の日常生活が一見淡々と描かれている。巧みに配された笑いを拾って読むだけでも充分愉しめるだろう。しかし読んでいてなぜか切なくなってくる。毒のある笑いのせいだろうか。痛みをこらえた無表情のためだろうか。本当は何もかも終わっているのに、懸命に何でもないふりをして生きてゆくことの傷みのせいだろうか。
表題作「こさめちゃん」の主人公はいつもニコニコ笑っているが、喋ることができない。その理由については作中で何も語られていないから最後まで分からないままだ。ただ、彼女の目には自滅する人間が見えてしまう。精神の危機的状況がバネとして視覚的に見えてしまうのだ。それが見えたとき、こさめちゃんの笑顔は消え、激しく泣き出す。
また、「スミ子の窓」の主人公は自分が嫌な人間であることには自信満々よと呟く。シリアスな状況と毒のある笑いを展開しながらも、ごく稀に温もりのようなものがひょこりと顔を見せることがある。たとえばそれは「スミ子の窓」のラストの一言だ。救われた気分になって思わず笑ってしまった。