「君の背中で、ぼくはおぼれる」の、衝撃的なデビュー作を読んでから、まひろファンになり、ありったけ読み漁った。この人のドラマ仕立てのシチュエーションには、またまた驚くけれども、今回は、その展開が、今一歩、足踏みするところがある。それは、たとえば、宮崎駿監督作品の「耳を澄ませば」に見るような、隠れ家的な発想、悠々自適の時計職人と、そこへ転がり込んだ若い男と言う、いわば、絵になるようなシーンを作って、物語を展開しようとしたこと、そのものにあるといってよい。
沢木まひろさんは、どうやら、演劇大好き人間であるようで、それはそれで、短編にはすばらしいシチュエーションを展開して見せるけれども、・・・たとえば、「ヘヴンリー・ヘヴン」・・・この場合、「君の背中で、僕は溺れる」にあるような現実的な緊張感が、失われている。彼らは、時計屋の二階へ避難すれば、とりあえず、逃れることができる。それが宮崎駿モドキであって、現実性を失わせている要因なのだ。
より、軽く読める、ライトノベルスとしては、この方がいいのかもしれない。二番煎じでも、沢木まひろは、やはり沢木まひろだ。