良い本です。それは確かです。ただ、臨床経験を生かした実例に乏しく、かといって論理的な展開も深くはないため(この点は専門書ではないので仕方ないと思います)、全体として物足りない感じがしました。やはり、学者ならぬ精神科医には、実地の経験を生かして書いて欲しいなと思います。
主張されている内容はまったく正当です。人によっては「当たり前のことを今さら何をくどくど書いてるんだ」と感じられることでしょう。確かにせいぜい三つほどの要点を、手を変え品を変え主張・説明していて、「ここまでしつこく書くの?」という気がしないでもありません。ただ、おそらくはこれは編集者と著者の意図のズレ(特に想定対象読者、売り方のズレ)によるものでしょうから、必ずしもこの著者の魅力を減ずるものとは言えないように思います。
著者の他の著作の方が面白いとは思いますが、本書も悪くはなく、次回作にも期待が持てます。