精神科医である大平健氏の本は、どれもおもしろい。
『
顔をなくした女』 『
豊かさの精神病理』 『
純愛時代』 など、人間の心の複雑さと奇妙な働きには、つくづく感心させられたものです。
今回の対談相手は、漫画家の倉田真由美さん。
大平先生の微妙な発言にも、素早く聡明な受け答えをしてくれるので、読んでいて気持ちがいい。
本来ならば重苦しくなりがちな話題を軽やかに進められるのも、このお二人のキャラクターがあったればこそ。
プロの精神科医というのは、患者の顔を見ただけで、パッと何の病気か判断できるのだという。
ところが、大平先生の発言をうけた倉田さんが、次のように問いかけると予想外の答えが。
プロとしての仕事とふだんの生活というのは、ずいぶんちがうらしい。
倉田 「しゃべり方とか表情とか仕草とかも含めて、人は結局、見かけで分かりませんか?」
大平 「僕はきっと分からないな。日常生活のその手の観察眼は全然ダメ。病気の人以外は分からないんですよ」
ほかにも、目からウロコが落ちるような話がもりだくさん。
どんなにキツイ仕事でも、それがストレスとなり心の病気になることはなく、多くの場合、仕事での人間関係のほうが病気の原因になっているという。
いま話題となっているパニック障害も、たんに呼吸のしかたが下手なだけ。
リラックスして呼吸のしかたさえキチンとなおせば、大抵の人は薬なしで治るのだとか。
倉田 「そうだ、私は若い頃、公園で彼氏とキスをして気を失ったことがあります。ものすごく彼のことが好きだったからキスに感激して、パニック障害みたいなことになったんだと解釈していたのですが、あれは・・・」
大平 「まあ、単に呼吸が下手だったのかもしれませんね(笑)」
あとがきは、倉田さんの懐妊&結婚の報告。
大平先生も腰を抜かしそうになったという、この間の経緯とギャップについては、本編を読めば愉快に笑うことができるでしょう。
どうぞお幸せに。