本書は「格差社会」そのものをテーマにしたものではなく「勝ち組の憂鬱・負け組のいら立ち」という言葉が象徴するコミュニケーション不全に陥った社会で不満を抱えながら暮らしている現代日本人に、「格差社会」というキーワードを臨床心理学の視点から用いて、人生を自分らしく幸せに生きるためのアドバイスを与えてくれる、心のあり方そして人生の参考書だ。
著者は、勝ち組の自己努力のみで成功したという過信と、負け組の努力してもしかたないという実感との乖離、つまり「ぬけがけと嫉妬」という言葉が示す国民の間の心理的格差が、実際の経済格差よりも大きく広がっていると警告する。そしてその理由として、日本人の大多数が、収入・地位・資格・生活水準等の外的条件のみを重視し、自分らしく生きたいという自己実現欲求を抑圧していることを指摘する。
テレビの普及や生活環境の都市化により、ひとりになって自分の心の内側や自然の移り変わりと対話する時間が持てなくなり、外的条件の比較ばかりするようになったことが生きづらさの原因だとする著者の説には根拠が足りないと思ったが、ユングのちょっと難解な「無意識的視点を人生に加える」という言葉は、今後の生き方の参考にしたいと思う。