セミナーは、大きな会場の舞台に設定された「教室」で、小学生と中学生の十数名を生徒に、算数と国語の授業を実際に行う、というもの。客席では、父母をはじめとする大人たちがその授業を見ている。全体は3部構成。第1部河合隼雄の算数。第2部谷川俊太郎の国語。授業を終えての2人の対談が第3部である。
河合隼雄が算数とは一見意外な取り合わせだが、河合は大学を出て3年間、中高一貫の私立校で数学教師をしていたという。「間違った答の方にこそ可能性が秘められている」を持論に、間違いの筋道を辿りなおす授業のすすめ方は、算数を媒介にしたカウンセリングの趣きで、ユング派心理療法家の面目躍如。
一方、詩人谷川俊太郎の国語の授業は、教えるというより、一緒に遊んでいるような楽しさだ。子息谷川賢一のピアノ伴奏で、「あいうえお、かきくけこ…」の五十音を、子どもたち一人ひとりに感情こめてうたわせたり、5・7・5で区切って俳句読みをさせたりと、ことばをからだ全体で受けとめさせる体験授業。意味伝達としてのことばだけではない、赤ちゃんのとき誰もが母親から「声の愛撫」として習得してきた、ことばの音や響きの力にもう一度気づかせてくれる。
あっけないほどの読みやすさ。でも内容は深い。算数のもと、日本語のもとが持っている、シンプルな豊かさが確かめられる本。(中村えつこ)
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