プロテスタントの牧師が書いた一般向けのキリスト教案内。著者の立場もあって記述はプロテスタント寄りではあるのだが、教派にこだわらない広がりを持った良書だと思う。聖書解釈としてはリベラルだが、その裏側にしっかりと信仰の背骨が通っているのが読んでいて気持ちいい。著者の信仰に対する揺るぎない姿勢があればこそ、物事の核心を突いたことがずばり言えてしまう部分もあるのだ。例えば、
『宗教改革者たちは、「聖書のみ」の合い言葉によって、ローマ・カトリック教会の神学を批判すると同時に、それまでの信仰の遺産をすべて捨ててしまうのではなく、継承すべきものは継承し、捨てるものは捨てるという態度を貫きました。』(p.118)
なんてことすがさらりと書いてある。これは「プロテスタントは本当は『聖書のみ』ではなく、教会の伝統的な信仰も引き継いでいる」という当たり前の歴史的事実を述べているのだが、この程度のことすらじつはプロテスタントの立場から書いたキリスト教入門には書かれていないことが多いのだ。「プロテスタントは聖書のみ」という建前を、いまだに事実だと思っている人はプロテスタント教会の中にも山ほどいる。この本は教会の中から教会の外の普通の日本人に向けたキリスト教案内だが、むしろ僕はこれをクリスチャンに読んでほしい。あるいはキリスト教系の学校で、授業用のテキストとして使ってもいいかもしれない。