なんだけど。なぜ、ヤングの「たんぽぽ娘」が入っていないのか。(お約束)
日本人SF者が大好きな時間ものを古今織り交ぜたアンソロジィ。
チャン「商人と錬金術師の門」(08年ヒューゴー賞・ネビュラ賞中編部門、09年星雲賞海外短編部門)を単行本に初収録。極端に寡作だが練りに練った短編で、SF者の間ではすでに盛名を馳せる著者。彼らしい専門用語を全く使わないハードSF(何せ、舞台はアラビアン・ナイトだ)で、人生の悲哀を切りとって描いてみせる。傑作。
古典SFのパイパー「いまひとたびの」(発表は47年!)は人生をやり直す物語。過去に戻るということを、こんなにも希望にあふれて肯定的にとらえることができるのは時代の産物か、著者の個性か。爽快な作品で、私は本書でこれが一番好みだった。
バズビイの表題作と、ショウ「去りにし日々の光」はリリカルな物語を求めてやまぬ我が同胞SF者(私もだが)には、まずお薦め。プリーストの「限りなき夏」もいい。
この編者には馬鹿SFがかかせない。「彼らの生涯の最愛の時」(ラブロマンスだが、wがつく)、「時の鳥」そしてスチャリトクル「しばし天の祝福より遠ざかり……」が極めつけに破天荒な馬鹿SF。人類全体が、ただ一日を700万年繰り返す。しかも意識を持ったまま。あの長門有希だって594年で飽きたのに、700万年って。考えたら負け。
時間ものには力のある物語は少ないけれど、読み終わったあとにホッとさせるもの、我が身をふりかえさせるもの、元気にしてくれるものが少なくない。疲れたときには、再読する時間SF。これが結構きく。