家、といってもよくある暮らしぶりの本ではなく、実家やパリ時代も含めて、こぐれひでこさんがこれまで住んできた家の歴史をつづった自叙伝であり、家のあり方を考えるエッセイです。
おもてなしの本を思わせるタイトルで損をして絶版になっちゃったのかな、と考えてしまう良書です。
小暮夫妻の仕事、ライフスタイルと一致する読者は多くないでしょうが、それは問題になりません。
住まうことと生活を楽しむことへの執念といえるほどのエネルギッシュなこだわりは、かつて70年代の幻のファッションブランドのデザイナーであり、いまは食のいろいろな姿をイラストで見せてくれる著者の魅力としてまず面白く読めます。
そしてこだわり抜いた我が家、それが怪我の経験や年齢によって不安な面を見せてきたという率直な述懐からは、ただこだわるだけでなく、状況に合わせて生活をかえていける柔軟な精神が見て取れます。
エッセイやコラムでこぐれさんご自身のファンになった方には、食ものよりむしろおすすめの1冊です。イラストや写真も多い本なので、美品が手に入ればぜひ読んでみてください。