本書には報道に携わった当事者“だった”ものでなければ書けないことが書かれている。現役の記者ではとても表明できないようなことが実に率直に一般人の目線に立って書かれており、その多くは驚くべき事柄だ。
例えば、中東の特派員が本社デスクから仕入れたニュースを「現地からの報告」という形で流すために存在し、彼らの多くが現地語を話せないどころか、現地の一般人と接触さえしないなどという話には正直驚いたし、独裁政権下では人々が何を思っているかなどいくら取材しても到底分からないことなどは、本書を読むまでは理解していなかった。また、報道というものは多かれ少なかれ操作され歪曲されているもので、公平な報道というものは希だとは思っていたが、本書からは、“公平な報道”という概念自体が成立しないことが伝わってくる。
読み進めるうちに絶望感に襲われたが、がんじがらめでどうにもならない世界情勢とその報道に対して真摯に向き合う筆者の姿には勇気づけられるし、書かれていることひとつひとつが、私たちが世界に正しく対峙していくための優れたアドバイスになっている。