来年で入門から二十周年になる菊之丞は、若手真打のホープの一人。
本寸法な芸に粋と色気を添えた高座にファンも拡大中だが、その彼が
こんな本を書いたことに、まず驚いた。
「ここまで書くの!」といった内幕を含め、よくぞ書いてくれた、
と拍手を送りたい。
ヤマ場の一つはNHK新人演芸大賞で優勝した翌年に、定席寄席の
席亭推薦ということでたった一人で真打に昇進し、その披露目の
パーティー(帝国ホテル!)や四十日連続の定席での披露興行における、
借金地獄を自ら暴露している部分。
そして、その苦悩の時期にも、いろいろ心温まる話があったことが
紹介されており、これはあの世界にいなければ分からない話。
最終の第五章も圧巻だ。志ん朝、右朝といった同じ古今亭の大先輩達
との思い出や、高座の後でズシンと響く小三治からの言葉なども圧巻。
今まさに落語に惚れ、そして戦っている菊之丞の思いなども吐露
されており、この本を読むことで、彼の高座の楽しみが倍加することは
間違いない。
『赤めだか』に決して負けない、噺家さんが書いたエッセイとしてお奨め。