「本格百合野球」のキャッチフレーズに惹かれたか、百合愛好家には密かに高評価を受けているようだが、
だからといって野球ファンに敬遠してしまう人がいるとすればそれは残念なことだ。
女子野球だとか百合だとかを取っ払って「野球小説」として見ても本書は一級品である。
あなたが極端に百合に嫌悪しない野球好きならばすぐに本書を読むべきだ。
全国高校女子野球大会決勝。完全試合まであと1人。けれどカウントはノースリー。
ダスティン女学院のエース・羽紅衣の肘はもう限界だったのだ。
マウンドに駆け寄った女房役の鶫子に呟く
「キスしてくれたら、頑張れるかも」
思わず女子野球であることは忘れてしまう熱い展開もさることながら
小ネタも野球ファンがニヤリとできるものが数多く練り込まれている(バントをしない強打の2番打者黄金ルーキー、稀代の打者・狼主、
そもそも"マウンドでキス"も数年前、甲子園で実際に某高校の球児がやって話題になりましたね)。
作中にも出てくる"女智仁"という異名から羽紅衣がどんな投手かわかる人もいるだろう。
構成も凝っており、ぐいぐい話に引き込まれる。とにかく作者の野球愛を感じる内容だ。
百合も野球も本格派。さながら羽紅衣のように。