大阪の役に勝利した家康は、豊臣家の滅亡と幼い時に人質同然に秀頼に嫁がせた孫の千姫の帰還に満悦していた。しかしいまや千姫は徳川家ではなく豊臣家の人間だった。千姫は侍女の中に秀頼の胤を宿したくノ一をしのばせ、豊臣家の存続を図る。それを知った家康は伊賀忍者にくノ一の抹殺を命じる。ここに、くノ一と伊賀忍者、5vs5の死闘が始まる。
というわけで、もちろんこの作品の肝はくノ一達と伊賀忍者の度肝を抜く荒唐無稽の忍法合戦だ。
しかしそれを成立させているのは家康や千姫、阿福などの物語を織りなす実在する登場人物ではないだろうか。
人質同然に敵方の豊臣に嫁がされ、嫁がせた張本人の家康に夫を殺されるという悲劇を味あわせた徳川へ恨みの苛烈さとともに、その徳川家への甘えも見せる千姫の心理。
肉親さえ道具にし、殺しさえしてでも徳川家の繁栄を守ってきたがゆえに、その最後の被害者たる孫・千姫への愛情に振り回される老境へ入った家康の心理。
その心理は、無いとはわかっていてもありえたかもしれないという説得力を持っている。それはこの荒唐無稽な作品の説得力にもつながっている。
また、史実へのリンクが絶妙。
途中からどうしてこの登場人物出てきたんだろうと思っていたら、すべては史実とのつなぎの強度を上げるため。そのおかげで最後の一文には完全にうならされてしまった。