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自閉症者といっても、ルウは日常生活のレベルでは、現代よりも進んだ治療の結果、製薬会社に勤め応用数学者として自己の才能を発揮できる仕事をこなしている。
フェンシングに通い、密かに思いを寄せる女性もいる。
突然、ルウにもたらされたのは新上司による、自閉症の新薬開発のための人体実験にルウ達自閉症者の部署の解雇を切り札にした参加の要請だった。
ルウは悩み、悩む。
健常者であるはずの知人の一人から、稚拙で野蛮な感情を剥き出しにされ、非常に差別的な攻撃によって身の危険にさらされるという事件も重なって、ルウは自分が健常者であれば起こり得ないはずのことがあることに気づく。
文体は、決まった好みと手順を踏んで行わないことには日常の収拾がつかなくなることを経験的に学んできたルウの、聞く見る考える言葉にする等々の、読み手あるいは健常者に向けての翻訳めいた言い回しが独特だ。
こんなに細かに分析し、なぞり、発語に至る手順を踏んでいるのかと、驚愕した。
光の果てる処には既に闇が居座っている。だから、暗闇の速さは光を凌駕し得ているはずだと考えるルウ。
光の届かない処。それは私達の身の回りに、あるいは身の内に数限りなく存在する。
妬み・嫉み・蔑み・卑屈・嘲り……それら暗い情念はもとより、理解を前提としない驕りや高慢な態度。
人としてどう在れば、他者と共存できるのか。健常者とは一体どういう状態を言うのか?震撼させられた。
ルウの選択をノーマル達は、真に理解し得たのだろうか?私の心は、まだ揺れている。
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