腰を痛め趣味の日本舞踊が踊れなくなり気落ちしていた時、一人息子が薦めてくれたのは詩を書くこと。九十歳を過ぎてから書き始め新聞に投稿。掲載されたものらを集め百歳まじかで処女詩集の出版。掛かりつけ医や看護師・ヘルパーさんらの手を借りて二十年の一人暮らしの中で感じたこと想うことを柔らかい言葉で綴ってある。お年よりは歩く図書館と言われる如くトヨさんの小さな身体にも百歳間じかまで培ってきた知恵や想いが一杯詰まっている。亡くなった母親や夫との遠い日の思い出・奉公してた頃の辛い思い、半年あまりの最初の結婚生活の破綻後両親との静かな暮らし・見初められ再婚を決心し一人息子の健一さんをもうけた事等が百歳まじかならでわの深みのある言葉でググッと読み手の胸に迫り心を掴まれます。特に息子さんを題材にした詩は超逸品です。『風呂場にて』を読んだ時、最後の四行で怒涛のごとく感情が込み上げ出先の待合の椅子に座りながら泣き出してしまいました。多くのお年寄りが日々の暮らしの中で言葉少なになるのは決して物思わざるからではなくお年寄りのペースで聞く聞き手の心得不足だと思います。もっともっとお年寄りに話して欲しい。話が聞きたい。そう思わせてくれました。次作が楽しみです。