幼い頃、この絵本が好きで何度も何度も読んだ。読むたびに、なぜかとても切なくなった。
何でも食べるあおむしくん。三度の食事だけでは満足できず、ゴミを食べ、お父さんお母さんを食べ、
家を食べ、町を食べ、森を食べ、最後には大好きだったまさお(主人公)を食べてしまう。
まさおはあおむしくんの青いおなかの中で家族に再会する。そこには、家があり、町があり、生活があった。
あおむしくんが「地球」になった。
この本を閉じたあとに、青い空を見上げると、切ないような懐かしいような不思議な気持ちになる。
そして、自分がいまここにいること、家族がいること、町があり学校があり友だちがいること、
その当たり前のことの喜びをいまいちどかみしめて、安堵する。
芸術家の赤瀬川原平に「宇宙の缶詰」という作品がある。カニの缶詰の中身を取り出して、
外側のラベルを内側に貼りなおしてからハンダで密封する。すると、蟹缶が宇宙(缶の外側すべて)を包み込むという
壮大な発想の概念芸術(コンセプチュアルアート)である。
この天才芸術家の作品に通じる発想とスケールがこの絵本にはある。
美しい青い空、青い星。この地球がたとえあおむしくんのおなかの中だとしても、今日もお母さんがいて
ごはんをつくってくれて友だちと遊べることが何よりもうれしい。われわれはこの場所よりほかに帰る場所はない。
そのことをしみじみと感じさせてくれる絵本だ。