文化学院の創設者、西村伊作さんについては何の予備知識もなかったが(文化服装学院と勘違いしていたくらいで)、読みだしたら厚めの1冊をあっという間に読んでしまった。
大逆事件で処刑された大石誠之助の甥でもある伊作さんは、新宮の山持ちの息子にして、今で言えば大富豪の跡取り。キリスト教や社会主義にも触れるが、それにとどまらず、絵画、写真、服飾、設計、陶芸など、幅広い関心を持ち、特に大石さんの処刑後は、「主義」にも一定の距離を保ち、私財を投入して、学校を創設し、戦争中もリベラルな校風を維持し、投獄されても自分を曲げなかった男。
膨大な文献を駆使して平易な文でつづられたこの評伝は舌を巻くほど面白い。堺利彦さんの評伝である、黒岩比佐子さんの『パンとペン』と併せ読むと、それぞれの人生がクロスする歴史も浮かび上がって、なお面白いのでは?