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題の、きりぎりすが一切出てこない「きりぎりす」も、女のひとりがたりが巧みです。内容はいわゆる「夕鶴(鶴の恩返し)」に近いものがありますが、主人公の女性は鶴ではありませんし、しっかりとした感情を持っています。そんなシミュレーションのようにも思われるのでした。
女性のひとりがたりの「燈籠」「皮膚と心」「千代女」はどれも傑作である。自分の内面の醜さを知っている、あるいは環境の醜さを知っているという、そんな女性の主人公をして語らしむるところに効果があります。
それ以外にも嫌いな犬に愛着を抱いてしまう「畜犬談」、愚かなおしゃれとそれを好んでしまうことを自白する「おしゃれ童子」なども素晴らしく引き付ける力があります。
また、「おしゃれ童子」もそうですが、私小説的な独白の「鴎」や「佐渡」、そしてその匂いをうかがわせる「姥捨」などは、太宰治の人物像を知るに適していますが、「善蔵を思う」はそれをさらに明確にしていてわかりやすいかもしれません。
太宰の作品は「哀しい笑い」が多いです。でも、なぜかカタルシスを得ることができます。その傾向としては「水仙」を推薦させて頂きます。
とにかくこの一冊は、ある程度つながっているような作品もありますが、バラエティに富んでいて、楽しめる(語弊がありますが)ものとなっています。
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