仕事柄ミクロネシア関係の本を読む機会が多いが、「マーシャル諸島」を扱った作品はそれほど多くない。そのほとんどは「ビキニ環礁=核実験の被害に苦しむかわいそうな人々」というプロパガンダされたイメージをひたすら自己増殖させ続けている作品群である(特に今年はその傾向が著しい)。こうしたマスコミと一部の学者によって作り出されている「虚構の民族誌」にうんざりさせられていた中で、偶然書店で見つけたのがこの作品。著者は青年海外協力隊員としてビキニ環礁の人々が移住してきたキリ島で教員をしていたが、そこで見たのは、援助づけに馴らされてしまい、故郷「ビキニ環礁」を忘れてしまいつつある現在の「ビキニアン」たちであった。こうしたキリ島の人々の現在を、著者は個性豊かな文体でユーモラスに描いている。ブラボー実験から50年、本当の「ビキニ」の現在を知りたい人は必読の一冊である。