本書は大きく分けて哲学的部分(時間論)、人生論的部分(死生観、自殺論)に分かれます。
・哲学的な部分について
時間論については、未来、過去、現在についてわかりやすくまとめてあります。
おそらく想定読者は中高校生でしょうが、この程度の難度ならOKだと思います。
・人生論的部分について
一般に「なぜ自殺してはいけないのか?」という問いに対する答えは幾つかのパターンが
あると思います。
ここで筆者は、
(1)自殺したくなるのは世間的価値観に合わせた生活をしなければならないことと、
自分独自の価値観をつらぬけないつらさを自殺の原因と置き、
(2)後者を貫くことで前者の価値観からは評価されなくとも納得のできる人生がおくれる
(後者については哲学研究を想定しているようです)と説き、
(3)よって、人生には生きる価値がある
と結論付けています。
この論法は、目新しいものでもないし、また様々な反論もできると思いますが、
読者層を考えると、妥当なところではないかと思います。
(筆者が哲学者だから仕方がないのでしょうが、自分独自の価値観追求=哲学研究という
色合いの濃さが少し気になりますが)
本書でこの主人公である引きこもりのクライ君のような方が少しでも勇気付けられるなら
(そしてその可能性は低くないと思います)
価値ある一冊と言えると思います。
#それにしても作者にしてはポジティブな本です。
(例えば同じ筆者の
不幸論 (PHP新書)、題名だけで苦笑いです)
別の評者が書いておられるように、出版社側の意向もだいぶくんであるような気がします。
偕成社HP「ごあいさつ」より引用
「子どもの本は、その人の未来に広がる奥深い本の森への入り口ですが、ただの読書入門編
として大人になると忘れ去られるのではなく、人生の折にふれて読み返し時に励ましてく
れる本が、必ずあるはずです」