良くある感動物だと思って全く期待していなかったけれど、「あれ、このタッチは意外としっかりしている?」と真剣に見始め、友人と再会するごく何気ないシーンを見てウルッと来てしまい涙しました。これは映画的なテクニックを使ったうまさもあるのですが、それを全く嫌に感じさせません。そこからはすっかりこの映画の虜です。原作小説の出来もあるのかもしれませんが、凄く心のこもった良い作品に仕上がっていると思います。ただ、スピリチャル物ではあるので、死者が生者のように登場するのが苦手な方は避ける方が良いでしょう。
自分が死んでいるのか生きているのかハッキリしない、時間を止めたような生活を続けている主人公が「生きろ、自分の人生を歩め」とアドバイスを受けたことで、停まっていた時間が少しづつ動きだし、かつて抱いていたヨットへの情熱が蘇る過程は見事でした。この「死と再生」というテーマに正面から取り組んでいるからこそ、感動が起きるのでしょうし、原作の内容がしっかりしているからこそ、映像や演技でどう見せるかをよく考えられた作品と感じました。涙涙でなく、馬鹿な事をするところ、楽しむところは徹底的で、それが映画ならではの楽しさの演出であり、良いコントラストを生んでいます。
主人公が出会う人々は、親を亡くしていたり、大病を患っていたり、友人を亡くしていたりと、どこか死の影を帯びています。ヒロインでさえ死の影と無縁ではありません。が、このヒロインが良い意味での直球勝負のお気楽馬鹿で、死の影を払拭し、生を感じさせる象徴ともなっています。「なんだこの女」とも思うのですが、嫌味でもなくそれが彼女の良さなのですよね。それだけに主人公の感じる葛藤が、観客の胸に飛び込んできます。そしてそこに、観客を話に引き込む映画のうまさでもあるのですよね。
「ツバメ号とアマゾン号」以来、帆船の類には弱いのですが、ヨットのシーンは映像で見れる喜びを感じさせました。それになんだかんだ言って友達がいい奴で、「あぁ、コイツもずっと主人公を見守っていたんだな」と、涙もろく又そこで泣いてしまう訳です。停滞してた時間も無駄ではなかったと感じさせます。
「ヘアスプレー」で印象的な役を好演していたザック・エフロンは本物の演技力で、見た目だけで選ばれている訳じゃないと証明してくれます。
私はいわゆるお涙頂戴物や感動物はキライで、どちらかと言えばドラえもんの何気ないエピソードの方が泣ける性質です。心の琴線が少しズレているかもしれませんが、この作品はグッときました。