「きけわだつみのこえ」―。その存在は夙に知っていた。しかし実際に大学の生協で何気なく手に取り、その中に込められた今は亡き学生たちの声に目を通してすぐ後、衝撃が走ったのをよく覚えている。当時の学生たちの深い人間的教養にただ喫驚した。今の学生とは何と違うことだろう…と(現代の学生を貶めているわけではない)。彼らは排他的なナショナリズムに浮かれていたわけでもないし、天皇陛下万歳だったわけでもない。物事を深く感じる彼らは政府の欺瞞を見抜き、戦争と破滅への道を驀進する日本を慷慨していた。真に戦争の愚かしさ、残酷さを嘆いていた。逃れられない戦争という狂気の嵐の中、自分を失うまい、最後まで自分の意志を持ち続けようと必死だった。しかしそんな彼らの様々な想いも、戦争はすべて呑み込んでゆく。このような本をもっともっと読んで、そしてまだ戦争を部分的にしろ肯定できる人は一体何人いるのだろうか…。なるべく若いうちに、読んでもらいたい。