この10年余りだろうか、日本では、がんが末期になって
死が迫った時、ホスピスあるいは緩和ケアという選択肢が
広まりつつあった。それはそれで一つの進歩ではあったの
だが、しかし、そこで生まれた「緩和ケア」という概念は、
「死が迫った時の苦痛をやわらげ、死を受容する場所」
というもので、多くのがん患者にとっては死期が近づいて
いることの宣告であり、治療の終焉を意味し、容易には
受け入れがたい選択であった。
しかし、更に発達してきた「緩和ケア」のテクニックは
違う意味も含んでおり、「がんから生じる痛みや体力の低下
などを緩和するもの」であり、そのような「緩和ケア」を
通じて、必要があれば再び放射線や抗癌剤の治療を行う。
この本では、典型的なケースを通じて、このような「緩和
ケア」の概念の変化をわかりやすく説明していた。「緩和ケア」
を誤解して苦しんでいる患者がまだまだ多いこと、医療者も
まだ十分にこの変化に対応していないことなども描いていた。
新しい治療法や治療概念が生まれた時、医療制度や行政や一般人が
リアルタイムに変化することはむしろ少ない。そのギャップを
埋めるのは、その変化を乗り越える必要性を感じた人々である。
そのような人々の活動も、この本では平易に伝えている。