この作品のラスト、新人戦の決勝レースは、私が見た映画の中で最も
心に残っているシーンの一つだ。ヒメの「スパート、スパート!」の絶叫と
クルーが必死に力漕する姿が美しい背景と溶け合い、リーチェの歌う
主題歌オギヨディオラと一体化して脳裏から消えることがない。
この映画で描かれているものは何か?友情?青春賛歌?スポ根?
タイトルから受けるイメージや高校生のボート競技を扱っているところ
からそう思われがちだが、あえてそれは一面だと言いたい。少なくとも
私にとっては違う。何かと問われれば、それは失われた青春に対する
鎮魂ではないかと思う。だから、劇中のクルーのように高校時代部活に
励んだ経験がある者も全然そうではない者もラスト・シーンでふと気が
ついた時涙ぐんでいるのだ。
しかし、私は今青春を謳歌している若者達に対して羨望の眼差しを
向けたりはしない。何故なら、彼らがどんなに確信に満ちた言葉でその
素晴らしさを語ろうとも、本当のところは何も気づいていないに等しいと
いうことを知っているからだ。気づいていないのではなく、その時点では
彼らの中にまだ存在しないといった方が正しいかも知れない。存在しない
ものには気づきようがないからだ。
だから、この作品から私が感じるものは打ち震えるような感動とは違う。
悲しさとか空しさと言ったものでもない。そこにあるのは例えようのない
切なさだ。失われた自分の青春への郷愁、そして今はどうやっても彼らに
伝える術はないんだと自分を納得させながらも、止め処なく湧き上がって
くるもどかしさだ。