人の心には、将来のことより目先のことを重視する双曲割引の仕組みが備わっています。これは人類が危険の多い世界を生き延びるためには欠かせない特質でした。しかし安定した文明社会では、長いスパンで合理性を追求することで、大きな利益を得られます。
目先の欲求に負けず、将来の大きな希望を実現するためには、本能を理性で抑える忍耐力が必要です。本書には、2週間分、41のワークが収録されており、忍耐力を高めるコツを学ぶことができます。どんどん読み進めれば1日で読了できそうな本ですが、ワークに挑戦しながら読み進めた私は、読了に8日間を要しました。
著者は、多くの人が「我慢できない」のは、「合理に背を向けているから」ではなく、「視野が狭く、状況が見えていないから」だという前提をおいています。それゆえ本書の解説は、よく想像力を働かせて状況を正しく認識するコツに注力しており、我慢すべきかどうか判断基準は「有益ならやれ、無益ならするな」これだけです。
ワークにうんうん悩み、回答例に「ええっ!?」と驚き、解説に「なるほど!」と膝ポンしつつ読んだ私ですが、著者に同調しない部分もあります。著者は客観的な得失を重視しますが、幸福は主観的なものです。後悔すら功利の計算に取り込み、あえて「愚行」に及ぶことすら、幸福を基準とすれば不合理とは言い切れません。
とはいえ、わけもわからず不幸になるよりは、予想通り不幸になる方が、よほどいい。じつは「9日目」のトレーニング導入文を読むと、著者も究極的には「あれもこれもわかった上で自由に選択する」ことを勧めているように思いました。