衛藤ヒロユキは、昔『ドラクエ四コマ劇場』で独特のギャグを披露していた。本作は、そのゲーム好きな作者が、キカイへの想いを込めて描いたものである。『グルグル』は魔法と魔物の世界の話だが、これは現代日本(東京)を舞台としている。このように科学や経済が行き過ぎるほど発達してしまった社会で、日常性を保ちつつ不思議な話を描くのは難しいと思うのだが、本作はそれを見事に成し遂げている。そして、月刊誌だけあって絵が丁寧である。6ページの教室の後ろの黒板などは芸が細かい。
ストーリーは、中学一年生の少年の日常から始まる。しかし、そこにも現代的な問題が隠されているのだ。第一話の表紙で、周一はこう述べている。「だんだん自分にはわからなくなる 今この世界はどっちのモードなのかと」そしてその直後には、「まあ実際人間にはあまり興味なかったんだよね 自分でもこれじゃヤバいなあと感じてはいたけど」という独白がある。つまり、彼はゲームやインターネットなどのヴァーチャル・リアリティに浸っていて、現実感を失いそうになっていたのだ。
だが周一は、タレちゃんに恋をすることで、人間関係に興味を持つ。これだけでは普通のジュヴナイル・ストーリーであるが、本作では、そこからまた「がじぇっと」というファンタジーに入っていくのだ。では結局、現実には目覚めないかと思う人もいるだろう。それは作品のラストで「がじぇっと」が消えることによりなされる。しかし中学生たちにはファンタジーが必要なのだ。本作でも現実が描かれているが、それはいじめ、ひきこもり、失恋、嫉妬という辛いものである。その辛さ、苦しさが「がじぇっと」を生み出したのだ。
それにしても、本作は登場人物が多く、からみあう人間関係がよくできている。そして一人一人の悩みがはっきり伝わってくる。ぜひ少年少女たちに薦めたい漫画である。