映画の封切りからもう十数年ですが、日本版DVDが出るこの日をずっとずっと待っていました!!
シェークスピアの喜劇の中でも、特にハッピーな本作品。「嘘」によって恋に落ちる二人があれば、「嘘」によって引き裂かれる二人があり、やがて「嘘」が驚きの結末と「真実」を運んできます。舞台はのどかな田舎町メシーナ。会えば喧嘩ばかりのお互い口達者な独身主義者ベネディックとビアトリス。ベネディックの親友で、年若で繊細(かつちと早とちり)なクローディオと、メシーナを治める知事レオナートの一人娘で、ビアトリスとは従姉妹の大人しい淑女ヒアロー。2組のカップルを中心に、話は家族、召使い、滞在客、町の警防団を巻き込んで進んでゆきます。この作品は、明るい日差しの下で撮られた映像も多く、舞台で接するシェークスピア作品以上に物語の世界がリアリティをもって伝わってきます。どうぞ2組の恋の行方のみならず、思わぬ方向へと変化し続けるストーリーの行方にもドキドキしながらご覧下さい!
なお、日本語での字幕もしくは吹き替えもよいのですが、ぜひ英語でのセリフまわしにもご注目下さい。リズムがよくて、耳に残る名台詞がたくさんちりばめられた作品です。ベネディック役のケネス・ブラナーは、本作の監督兼主役ですが、本場のシェークスピア俳優の見事な演技力でぐんぐんひっぱります。当時彼の奥さんだったエマ・トンプソンが相手役ビアトリス。男勝りで陽気で勝ち気な性格が、言葉の端々に現れます。他の役者もすごいですよ!レオナート邸に滞在する主賓で、威厳とやさしさ(と意外なユーモアセンス)にあふれたアラゴンの王子役がデンゼル・ワシントン。王子と半分血がつながった陰湿な性格の義弟にキアヌ・リーブス。真っ直ぐな若さが印象的なクローディオ役にロバート・ショーン・レナード。初恋に胸ときめかせる純真なヒアロー役にこれがデビュー作となるケイト・ベッキンセール。そして忘れてならないのが、町の警防団のリーダー役のマイケル・キートン。学が有るんだか無いんだかの警防団長の迷セリフの数々が、彼の顔と声と身体を通して発される場面は見物です。そして彼とコンビを組む眼鏡の警防団副長。セリフは少ないですが、この役にベン・エルトン。実は本国イギリス屈指のコメディアンで、その片鱗が垣間見えます。
シェークスピアは小難しい、というイメージをお持ちの方、本作品を見ると、そんな偏見はふっとんでしまいます。このケネス・ブラナー版「から騒ぎ」は、数あるシェークスピア作品を手がけた映画の中でも、特に楽しさと面白さと元気をくれるパワーでは群を抜いています。おためしあれ!