「からだの姿勢」とくに「すわる姿勢」のメソッドとメカニズムをここまで詳しく、わかりやすく書かれた本は他にないのではないでしょうか。日本と西洋、ヨーガと禅の対比など、文化的にも多様な側面から姿勢を掘り下げていて、「正しい姿勢」は一つではないのだ、ということがよくわかりました。単に歩き方や座り方を解説したハウツー本とはちがい、とても深いことが、とてもわかりやすく書いてあります。さらに原研哉さんのブックデザインも美しく、本としての完成度もなかなかです。
自然体の姿勢についてこの本は「背筋を伸ばさない」「胸をはらない」と解説し、「頭の位置」を調整するだけで背筋が「おのずと伸びる」ような方法を教えます。目に見える肉体ではなく、見えない「身体感覚」に訴える、という方法がこの本全体に貫かれている思想で、著者にしたがえばその歴史は、日本やアジアにたいへん古いものだそうです。
「立ち姿勢」や「歩行姿勢」についても、日本式と西洋式が分かれていて、とくに和式の歩行には「男歩き」「女歩き」「遊女歩き」などさまざまなバリエーションがあることを知りました。
個人的にはバレエを長年やっていましたが、「西洋式の歩き方」はクラシックバレエの方法に則っていることがわかります。バレエのプリエ姿勢で足先を横に開くとき、この本にしたがって「股関節から脚全体をねじる」と、骨盤の中心が非常にしっかりと安定して、いつも抱えていた膝の痛みが消えたので、正直驚きました。意識のちがいでここまで身体が変わるのかと、目から鱗でした。
ただし路上でクツを履く時は、舞台と同じ歩き方はできません。この本では「陰の練習はキッチリ型を身につけて、いったん外に出たら意識をしないで、自由にふるまう」と書かれています。結局は「自然体」を目標にすればいいのでしょうか。
「たたずまいの美学」を読んだときも、たいへん感銘を受けましたが「健康、強さ、美しさ、とが同じ一つの姿勢に収斂する。」という筆者の思想、姿勢に興味のある人は必読です。