娯楽映画を撮り続けたジョン・ギラーミンは、実はある種の叙情性を持つ監督だった・・・という目線でこのレビューを書こうと思っていたのですが、映画が始まるや、パトリシア・ゴッジの素晴らしい演技と存在感に引き込まれてしまいました。
『シベールの日曜日』では、森と湖が舞台になっていますが、本作はフランス・ブルターニュ地方の切り立つ断崖と波頭砕ける荒々しい海、空を飛ぶかもめの群れ、その崖の上に立つ館が舞台です。そして、ゴッジは本当に自然の中が似合っています。この映画の成功のひとつに、『シベール〜』とは対をなすような自然のロケーションを選んだこと、もあると思います。
なにより素晴らしいのは、やはりゴッジの演技です。空のかもめたちに向かって手を広げるゴッジ、パンを食べるとき、子供っぽくちぎるいたずらな手つきのゴッジ・・・あのしぐさといい、表情といい、なぜこの少女はこんなに自然体で、生き生きと、瑞々しい演技ができるのでしょうか。
『シベール〜』では一種の母性も持ち合わせた、神秘的なところもある役柄でしたが、本作のゴッジは、もう少し等身大の少女を演じているように感じます。しかしキャラクター造形はかなり複雑で、これはラストにもかかわってくるものなので、レビューでは伏せておきます。
この映画での、主人公アニエス(ゴッジ)の父はやや歳をとっていて、演じるメルヴィン・ダグラスの風格ある演技も本当に素晴らしくため息がでるのですが、この名優の存在感すら薄れてしまうぐらい、ゴッジの放つオーラはもうこの映画そのもの、と言わざるを得ません。
白黒の美しい映像。一見『シベール〜』とも似通っているかのように見えるストーリーは、また違った哀しみをたたえて、ラスト、観客の心に迫ってきます。
あまり多くの事を語るのはよします。
しかし、少女アニエスの、最後のあのセリフは、ある意味とてもショッキングで哀しいものでした。