北野勇作作品ではお馴染みの、かめ。
かめは語り手、ナツミの店子で屋根裏部屋に探偵事務所を構える。これはナツミによる事実を下敷きにしたフィクション・小説として紡がれるかめ探偵Kのお話。新聞小説らしい。要はメタフィクション。そして何が現実で、虚構で、はたまた誰かの、あるいは何かの夢見た、もしくは夢見るセカイなのかが曖昧模糊とした物語。つまり北野勇作的SFの通常進行。
いつもと異なるのは、このかめ、レプリカメ(模造亀)じゃない。たぶん。それによくしゃべる。探偵らしい探偵の振る舞いをするが、これは決してミステリじゃない。いや、ミステリとしても読めるかも。でもSFであることは間違いない。
ゆるゆると流れる、こことはちょっと違う、失われた懐かしい近未来の世界。かめ探偵の声に導かれるまま、ノスタルジーという、つくりものの記憶にしばし心身を委ねてしまうのです。