物語の主人公は、歌舞伎の始祖として知られる出雲阿国。
彼女をテーマにした小説やドラマは数多く作られているけれど、
この漫画は頭一つ抜きんでているように思います。
彼女の生涯だけでなく、当時の躍動する時代のエネルギーを活写していて、
ここまでリアリティを持って阿国を描いた作品ってなかったんじゃないでしょうか。
やはりこのへんは作者さんのコダワリが効いているところで、
時代背景や芸道の描写については超のつく本格派。
「芸の道を究めた女性」として美しく描くだけでなく、
実は差別され、犬猫以下の扱いを受け、物乞い同然だった中世の芸人たちの現実もありのままに描いています。
野盗や遊女街、太閤秀吉による弾圧・独裁…、
阿国の人生はまさに華やかどころか、アドベンチャーです。
ワクワクドキドキせずには読めません。
阿国に並ぶ主人公は、この近世胎動期という時代そのものなのです。
想像のしにくい時代ですが、これがこの漫画の中ではとてもリアル。
そこに作者さんの「ぬかりなさ」があるのです。
この漫画は、わずかな記録に散見されるだけの阿国に、生き生きとした命を吹き込み、
戦国から近世へと、躍動する時代を活写した傑作だと思います。