どの作品も、「絵に描いたようなハッピーエンド」に終わっていないところに、かえって好感を持ちました。切なくはあるのですが。
池井戸潤さんの作品は初めて読みました。銀行出身の作者のこと、例えば本題になっている「かばん屋の相続」なら、相続にまつわる経過説明が中心だろうという先入観があったのですが、そうではなくて、登場人物の心理描写に重きが置かれており、かつ人間を白か黒かで決め打ちしていない作者の温かい目線が、私的にはとても好みでした。
中小企業を必死に助けようとする銀行員もいれば、冷たく切らなければならない銀行サイドの思惑もある。金を借りる側、貸す側、事業を譲る側、譲られる側と、相対する一人ひとりの思いが交錯する。私自身、どの立場になっても持ちうる思いだと、知らないうちにかなり感情移入して読んでいました。
「手形の行方」「芥のごとく」は、本当に切ないです。でも最後の「かばん屋の相続」は、かすかに救いの光が見えます。6つの収録順も、なかなかです。