藤原道山が歌うように尺八を奏でたアルバムで、どの曲も違う雰囲気が漂い何回聴いても飽きることなく、ますますこのアルバムの質の高さを追体験する思いでした。
プロデューサーでアレンジャーの武部聡志氏は松任谷由実のコンサートでお馴染みですし、近年では映画『コクリコ坂』の音楽を手掛けた方です。藤原道山の素晴らしさは当然としてこのような関係者の強いサポートがあるからこそ、このアルバムが聴き継がれているのでしょう。武部さんのコメントがリーフレットに載っていますので少し引用します。「彼の吹く尺八があたかも唄っているかのように聴こえる選曲、サウンド作りを目指しました」とのこと。その通りのアルバムです。5年半前の発売ですが、その魅力的な音楽は今生まれたような輝きを帯びていました。
4曲目の「かざうた」はこの曲を作詞作曲した川江美奈子さんのヴォーカルが物凄く良くて聴き惚れました。藤原道山がアルバム・タイトルに「かざうた」にしたのもこの曲を聴くと理解できると思います。どこか懐かしい風景の中で美しい思い出が走馬灯のように流れゆく風にとらえました。藤原道山が歌に負けないような実にリリカルな演奏を奏でています。言葉はなくともこれだけ情感たっぷりに吹かれるとたまりません。名曲に負けない名演奏、味わい深いものがありました。
5曲目の松任谷由実の「水の影」のしっとりとした曲想が心地よく耳に響きます。ピアノは作曲家の妹尾武で、チェロは25歳で東京都交響楽団の首席チェリストに就任した古川展生です。藤原と彼らは後に「KOBUDO-古武道-」を作り4枚の上質のアルバムを生み出しました。この曲が切っ掛けになったかどうかは分かりませんが素晴らしい能力をもった彼らの美しい音楽の極上の調べは身も心もうっとりとさせる要素がふんだんに含まれているようです。