今日マチ子の最新刊はSF=少し不思議なお話。
近代的なSFな作品であれば、科学的な詳細なデータなどの裏付けが必要であろう。
しかし、これは藤子・F・不二雄氏が提唱するSF=少し不思議なお話。
そこをとやかく言う方は「ドラえもん」の秘密道具に科学的反証を求めるのであろうか?
「エスパー魔美」のテレポーテーションは作品中では科学的説明などされていない、
この場合のSFにそんなことを求めるのは野暮というものだ。
まずこの本の特質すべきところは絵である。
ともかく一般的なトーンを使った現代のマンガに慣れている人にとっては、
読み方に違和感がでることもある今日マチ子氏だが、書き込みを多くしていればそれで素晴らしいマンガなのか?
そんなことはない。手塚治虫の作品が現代も読まれているのだから。
カラーとモノクロのバランス感覚と見開きの使い方は今日マチ子にしかできない表現であろう。
FEEL YOUNG本誌に掲載の際には、1pを数回、16pを挟むという独特のテンポでの連載であったが、
それが単行本一冊にまとまると、そのリズム感はとても心地よく昇華されている。
「かこ」の心情の変化にも注目すべきだ。
彼女は、大学生。みらい君を家にあげて住まわせていることを見ると彼氏はいないだろう。
グレープフルーツは、瑞々しさのメタファーであり、「かこ」の処女性をも表している。
「かこ」がみらい君と共同生活を送るに従ってほのかな恋心を抱いているのは間違いないが、みらい君はお金儲けとらくだに夢中だ。
しかしその中で「かこ」に圧倒的な悲しい現実がつきささる。
クライマックスでの「かこ」のあの決断は、淡い恋を犠牲にしてより大きなものを守るという自己犠牲なのだ。
新築のマンションを買い与えられた少女は、みらい君を通して自分の未来/運命を感じることができるようになり、
また自分だけではなく、他者を守ることによって、少女から脱皮して女性へと変化していく。
この物語は少女の成長物語なのだ。
あと、豆子はかわいい。