鶴見俊輔、88歳、宗教に関するインタビュー集。基本的に思い出からものを語るので、無数の人物が登場してきてなかなかにめまぐるしいが、人名注記が豊富だから、なんとかついていける。たとえば、初めて伝記を書いた柳宗悦からは諸宗教を超える真理を、友人の橋本峰雄からは「地獄よりも緩い、緩い、偽善的な戦後日本の社会で、いまのことを考え」るヒントを、氏とも意外なつながりのある戸田城聖とその先達である牧口常三郎からは人間の本来性に立った教育のあり方や権力への抵抗への意志を、死後に改めて「門人」となった河合隼雄からは「イエのまなざし」により形成される日本人の心性などを学んできたことを、明晰に、含蓄深く、語っていく。
母親に暴力をふるわれながら育った氏は、自分は「悪人」だという感覚が骨がらみになった。その感覚において、you are wrongの論理で他者に改宗を迫るキリスト教への違和感を持ち続け、相反する価値も矛盾する神々もすべてを包み込むような仏教への共感を抱く。しかし一方、戦争も国家権力も融通無碍に肯定してしまった僧侶への反感も忘れられず、仏教の「広さ」を肯定しきれない、自分の「狭さ」にこだわる。その「狭さ」の倫理で国家・社会に向き合ってきた氏の人生が振り返られる。いわく「この本は、私が書きたくて書いた、いわば終点にあたる」。氏にはまだまだ色々と語ってほしいものだが、とりあえず、氏のひとつの到達点的な考えの様々が本書には並んでいると思う。