自分が中学生の時、理科の先生に「冥王星の軌道は楕円形なので、今は『水金地火木土天冥海』だ」、「冥王星の外にまだ天体があるかも知れない」と教わり、目を輝かせ、胸躍らせたのをついこの間のことのように思い出す。また、「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」では冥王星は物語上の重要な地位を占めたものだ。
冥王星は、単なる科学的な問題にとどまらず、文化的なレベルにも大きな影響を及ぼしている。ましてやそれを発見したアメリカ人にとってはさまざまな思いが当然あろう。本書はこの冥王星「降格」騒動を総括的に網羅した一冊である。科学的なポイントはおさえつつ、ユーモアあふれる事例と筆致ですいすいと読み終えられる。
文化、宗教、科学の分野での位置づけを確認し、天文学の進歩でその位置づけに疑問が出され、ついに惑星の地位を追われるまでのプロセスがよく理解できる。色々と抵抗があり、その背景には冥王星への愛着があったようである。その「降格」は天文学の知見の拡大により、パラダイム自体が転換された「コペルニクス的転回」の絶好の例といえよう。
「降格」に対する抵抗には笑って済ませられる部分も多いが、後世から見たとき、これは「天動説」と同じような扱いを受けてしまうのではないだろうか。意外はわれわれは歴史上の重要な転換点に遭遇したのかもしれない。