どう表現したらよいか戸惑うぐらい、心にぐっと迫る作品でした。必読おススメです。
恋愛とか浮ついたものはでてこない。
少年(いの)と、顔はいいのにちょっと風変わりなひきとったおじさん(お兄さん?)(ろく)の生活物語。
生い立ちの関係で複雑に屈折した性格をもついのと、そんな彼を淡々と自分の主義を曲げずに受け入れるろく。
ろくの態度はゆっくり時間をかけて、いのに生活能力やものの考え方を自然と身につけていく。
そこにろくの教える気まんまんの態度はない。教える気もないし、何かを身に着けさせようという 親心のようなものも皆無。
ただ、生活するには必要だから、時間が余っているならこうしたら、お使いでお金を余らせてお菓子を買うにはどうやって買い物をしたらよいか。
それぞれのヒントだけをぽろりと与える。
ただいのを受け入れ、ダメなものはだめ、よいことはよいと甘やかさない。
それだけ。お兄さんと子供のことなのに、そこにろくの優しさやいのを思いやる気持ちがみえて、心が温まります。
中盤以降はろくが毎週書いている手紙のことで言い争いになり、いのは家を飛び出すのですが、その結末もまた心に染み入ります。
自分が子供なんだ、ただの子供で、成長していかなければいけないのだという事実をいのが認識していく過程を描いた、傑作本です。